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生命力の象徴・モミの木

ケルト暦のツリーサークルで「りんご」の次はモミの木です。1月2日~1月11日、7月5日~7月14日生まれの人。

「この時期に生まれた人は、自己防衛本能が強い傾向にあります。傷つくのを恐れて他人に心を開けず、保守的なところもあります。けれどもいったんうちとけると信頼できる友人になれる人です。」『木の癒し』ギーゼラ・プロイショフ著 小川捷子訳 飛鳥新社

モミの木といえば、開口一番「クリスマスツリー」となりそうですね。クリスマスツリーの起源に関する伝承は数多くありますが、ドイツが中心のようです。ドイツ中部の山岳地帯ではモミの木に住む小人が村に幸福を運んでくれるという信仰があり、花、ロウソク、卵などをモミの木に飾りつけ、その周りを踊りまわっていたのに発するという考え方、8世紀に聖ボニファクスが布教の途、異教徒たちにとって神聖な木であった樫の木を倒し、代わりにモミの若木を新しい信仰のシンボルとして差し出した、という話。中世ヨーロッパで人気のあった「エデンの園」の劇の中でりんごをつるさげた木がモミの木だった、などなど。

もともと、キリスト教が布教される前から祭りに木を立てるという習慣は、広く行われていましたが、教会としては排斥すべき「異教的」習慣とされていました。ところが、普仏戦争のとき、ヴィルヘルムⅠ世がクリスマスにモミを配ったのをきっかけにドイツに広まったという説もあります。

マルチン・ルターは宗教改革のとある夜、森の木の上に見た天に輝く星を見て感動し、自宅でモミの木にロウソクを立て、そのルター家の様子が絵画になったことにより、民間に広まったそうです。

私は、ある星の降る夜、キャンプ場のテントの中で眠れぬ夜を過ごしていましたが、ふと夜空を見上げると背の高い木々の葉の間から天の星々がダイヤモンドのきらめきを惜しむことなく散りばめているではありませんか!「あぁ、これはクリスマスツリーだ!」と感激したのを思い出しました。

いずれにしても、常緑樹であるモミの木を「生命力の象徴」として神聖視されてきた経緯がからんできます。冬は闇、死、寒さを象徴し、その中でも青々として葉を保っている常緑樹は希望、堅実さのシンボルとされてきました。日本では松、杉、榊、などを神木とし、万年青(おもと)も縁起がよいとされていますが、緑に対する生命力のイメージは古今東西同じようです。

モミの木の話はクリスマスツリーよりさらにさかのぼります。古代ギリシアではアルテミスにとって神聖な木であり、「トロイの木馬」もモミで作られていたといわれています。

上記の本『木の癒し』に、ドイツの民俗学者、フレデリック・ヘッドマンがフィンランドのボチャークの人々の習慣について記しています。ボチャークとは現在ではウドムルト共和国といい、ヨーロッパ、ロシアのボルガ川中流域、カマ川とビャトカ川に囲まれた地域で、ウラル語族フィン・ウゴル族に属します。

そのボチャークの人々はモミを神聖視し、特定の枝を家族の守り神をとし、その枝にパンや肉、飲み物を捧げたり、葬式の帰りには、墓地から家までずっとモミの枝で体をたたき、悪霊が家までついてこないようにしたそうです。ボチャークの人々は祖先を祀ることを民衆信仰の基本にしたので、アジアに通じる要素があるようです。他にアイヌの儀式と比較したくなる祭りもありましたので、次回ご紹介しましょう。

モミの樹脂は殺菌力があり、新芽には豊富なエッセンシャルオイルが含まれています。その香りは暖かく、ウッディー。体力をつけ、不安やストレスを鎮める作用があります。目をつむって深くその香りを吸い込めば、そこは小人のささやきがかすかに聞こえる深い森。

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