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ジャンピング・たまこ

「たまこがいない!!」「え~!そ、そんな!」

みんなでそこら中を探してもなかなかみつからない。すみのほうに頭を突っ込んだ者が「きゃっ!」 たまこは、果たして前髪に飛びついてきたのである。まさにジャンピング・たまこ!ぴちょっ、ホッ。

夕飯時まで確かに、水の中で泳いでいたのだから突然いなくなるのはおかしい。というのは無知のしわざ。たまこはアマガエルになったのだ。お財布に入るほど小さな体にはまだ長い尻尾がたれている。

もらってきたときはまだかぼそい後ろ足が二本の状態の「おたまじゃくし」。近くの田んぼから救出してきたというが。口はまだパクパクと魚の丸い形で、目もまだ魚っぽかった。それが二日もすると口が左右に広がり、頭の部分が四角くなってきた。前足が出る準備である。

早朝、小さなピンクのバケツを上からのぞくと小さい右腕が伸びていた。バランスが悪いのか、いつもより泳ぎにくそうに見える。そろそろ、砂利を寄せて上陸の準備をしてあげなければならない。えら呼吸ももう少しで終わりだ。わりばしで砂利を寄せると、すぐさまたまこは顔を砂利に乗せた。へえ~、これは本に書いてあるとおりだ。

左腕が出る予定の場所が膨らんでいる。今度はいつ左腕が出るか気になってしょうがない。蝶ではないが、腕が出る瞬間を目撃できたら、それはもうけものだ。右腕が出たことに気づいてからおよそ3時間後、通りざまにのぞいたら、出ていた!ちゃんとちいちゃな吸盤もついている。しかし、疲れたのか、長い尻尾も動かさないままボーっと水面を漂っているだけだ。少々心配になってバケツを揺らすと、尻尾だけはひょろっと動かした。もはや魚の目ではない、まるで古代エジプトのレリーフのような目は未来永劫を見つめている。実に哲学的な眼差しだ。

それから私は安心して外出、夕方の帰宅後確認したら、たまこは元気になって泳いでいた。冒頭の事件はその何時間後かに発生したのであった。

昔、友人がおたまじゃくしをたくさんバケツで飼っていたが、ある朝起きたら一匹残らずいなくなり、それから近くの田んぼは毎夜カエルの合唱でにぎわっていた、と話してくれたことがある。その脱走を今回身をもって体験したわけである。朝まで泳いでいたのに、夕方には初ジャンプ、空気のある新天地へ飛び上がったのだから、すごい勇気だなと思う。いや、飛べてしまったのだろう。カエルのジャンプ力は侮れない。DNAの成せる神秘のショー。

カエルの変身は小さいころは、そういうものだ、と思って単に現象を観察するのみだったと思う。大人になってから目の当たりにすると、これは人類の胎内での進化と重ねあわさずにはいられない。現在では初期の胎児の発達がリアルタイムでも見られるが、古の人はどう感じていたのだろうか。次回はカエルの伝承に関して記してみたい。

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