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昭和村のからむし(1)

福島県は奥会津の昭和村を体験してきた。知る人ぞ知る、自然と人が調和しながら生活している場である。友人や先輩の親戚が昭和村出身ということで、間接的にその村の話は耳にしていた。そうでもなければなかなか出会えないプレミアムの村である。

「いいとこだよ~一度行ってみてね。帰りたくなくなるよ。」

そして、からむしを栽培しているところ、という情報から、いつか行ってみたい、と常々思っていた。また、昭和村を紹介する地方の情報誌を偶然眼にすることがあり、この夏こそ体験しようと決めたのである。

会津田島から山を超え、分け入ったその村は落ち着いた閑静な村里であった。ほとんどがかやぶき屋根からトタンになってしまっているが、みずみずしい田んぼの緑とかやぶき屋根型の赤い屋根は実に絵になる風景である。カエルが田んぼからぴょんと姿をあらわす。

今回の旅のメインは「からむし織」体験である。村の中心にある、からむし織の里にはりっぱなからむし工芸博物館、織姫交流館、郷土食伝承館苧麻庵が建っている。焼け付くように暑い外気の中、建物の傍らに世界中の苧麻が元気良く育っていた。ちなみに、「野からむし」はどこにでも生えているというから、誰でもどこかでお目にかかっているはずである。

葉っぱ自体はシソに似ているが、背は2メートルにもなるという。からむしはイラクサ科の宿根草で、苧麻(ちょま)、青苧(あおそ)と呼ばれる。いわゆる麻であるが、麻とは植物の茎の皮や葉脈からとれる繊維の総称であって、世界には多くの麻の種類がある。昭和村では麻とはおおあさ(大麻、ヘンプ)を指し、昔からからむしと共に植えつけていた。

昔はからむしの刈り取りをはじめとする一連の作業が終わると、今度はアサ(大麻)の刈り取りが始まる。背の高いアサはからむしの風除けになる。宿根草のからむしは5年もすると根が弱ってしまうのでその場にはアサを植えて土壌改良をする。このようにからむしとアサは不即不離の関係にあった。

ところが、戦後の大麻取締法の関係から次第に村でのアサ栽培は減っていった。もし、アサを盗まれたら、栽培者の責任も追及されるからである。現在、アサの栽培は消滅してしまっている。そのあとにはカスミ草が美しく咲き誇り、昭和村といえば日本におけるカスミ草生産第一位となっている。

昭和村は本州唯一のからむし生産地で、伝統的な方法によって高品質な原麻が生み出され、生産と苧引きの技術が国選指定保存技術に、からむし織は福島県指定重要無形文化財として認定されている。

実は小千谷縮と越後上布の原料となっていることは意外と知られていない。近代以降、分業化され、からむしは小千谷ではしぼ(皺)をつける技術が発達したため、さらに夏の肌触り感がよくなった。以前、すてきなブラウス、と値札をみるとふつうの製品が10数枚買える値段で驚いたら、小千谷縮であった。高級品である。

昭和村のからむし織はもっと素朴である。染色していないものは小麦色の地に薄茶、時に緑色などが入り、ナチュラルで目に優しい。製品は幻の繊維、織物と言われるくらいだから、オートクチュールを買うくらいの覚悟はいる。(昭和村のからむし(2)につづく)

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