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おおあさ・大麻・ヘンプ(1)

奥会津の昭和村でアサといえば、おおあさ(大麻、ヘンプ)を指す、と既述した。かつてはからむしと共にいつくしんで育て上げていた生活必需品である。

「タイマ」と音読みすると、たいていの人々は眉をしかめることになる。大麻取締法を連想するからだろう。かつては自分もごたぶんに漏れず、そんな反応をしていたと思う。数年前、ある20代の人から、

「大麻に興味ありますか?誤解しないでくださいね。麻薬と思われてしまうものではなくて、布や紙、食品、神事用、産業用、趣味にもなる万能な植物なんですよ。これからおおあさと言いますから」

このときは、マリファナのイメージ、麻といえばあの涼しいけれどシワシワになる、という知識しかなかったので、食品、産業用という響きはよく飲み込めなかった。その人から赤星君という、君というからには若そうな人物の著書を紹介された。『ヘンプがわかる55の質問』バイオマス産業社会ネットワーク発行 機会があれば本人に注文しようと思っていた。

と、その記憶が頭の隅に移動しつつあるころ、関西で「大麻に興味ありますか?」と同じような質問をされた。このときは壮年の方からである。どうも全国的にいろいろなグループがあるらしい。

那須をドライブしていたとき、ふと横をみると「大麻博物館」の看板が…。そこで、世界のヘンプの糸作りの違いなど、いろいろなことを教えていただいた。帰宅後本を注文。200011月が初版であった。

おおあさ入門にはもってこいの書であろう。全体像が理解できる構成になっている。万葉集には麻にまつわる歌が55首あることから、55の質問ということらしい。その後赤星さんご本人とも知り合う機会があり、彼が開発した製品などいろいろ教えて頂いた。

おおあさは雌雄異株で、問題とされるのは雌株の花穂、葉である。THC(テトラヒドロカンナビノール)という含有成分が向精神薬作用をもたらすため、問題の焦点となっているのだ。もっとも海外ではすでにその花穂の部分も医療目的で使用され始めている。薬効が高いらしい。

現在の産業用ヘンプにはそのTHCがほとんど含まれていない品種を使用している。日本では栽培許可制となっており、盗まれた場合には栽培者の責任となるので、鉄柵で囲み、花穂、葉は灰と帰している。現在、実用されている部分は、茎と根と種の部分である。

おおあさといって、わざわざ珍しがることもない。ただ意識していないだけで、実は私たちの身の回りに昔から根付いているものである。誰もが口にしたことがある七味唐辛子の麻の実、お盆の頃に大概のスーパーに出回るオガラは皮を剥いだ後の茎、神社の注連縄、カランカランと鳴らす鈴縄、凧揚げの糸、花火の火薬の原料、雷様から守ってくれる蚊帳、などなど、枚挙に暇がないほどである。

このようにおおあさは日本でも太古の昔から生活の一部になっていたが、吸引という習慣がなかったにもかかわらず、戦後の大麻取締法によってその地位は一変してしまった。一度ついてしまったイメージはなかなか払拭できないようである。といっても世界では、どんどん新しい使用法が開発されている。

種子から良質な植物油、シャンプー、リンス、化粧品などが一般にも手に入りやすくなり、車のガソリン代わりにもなる。ヘンプビールはそのいい味もあって市民権を得てきた。茎のセルロースからは微生物に分解され土に戻る生分解プラスチックが製造され、知る人ぞ知る、ベンツの内装にも多用されている。重量的にも軽く、もちろんエコロジー対策にもなる。茎の繊維を固めるとコンクリートより強度が高く、軽量、断熱効果のある建材として実用化されている。

くるみの味がする、麻の実の料理やアロマオイルに関する本もすでに出版されおり、麻の実をメニューに出しているレストランも増えてきた。ただし、食べ過ぎると人によってはチョコレートを食べ過ぎたときのような症状になる人もいるので、薬味程度からはじめるとよい。

糸、ひもの分野では麻太郎さんらの活動で、ヘンプアクセサリーがナチュラル志向ではやりだしている。電車の中で立ちながらストラップやブレスレットを編んでいる女性も見かけるほどである。糸の種類や色も増えて、東急ハンズでもかなりの面積を占め始めた。

ここまでは趣味・産業用のヘンプの話である。神事用、および精神世界のおおあさ研究家は中山康直氏。製品開発のほか、大島で縄文エネルギー研究所を主催し、『麻ことのはなし』評言社の著者でもある。天皇が大嘗祭でアラタエ(大麻)とニギタエ(絹)をお召しになることなども記載されている。昔からおおあさは神の依り代と考えられている。ある程度、古神道、スピリチュアル的なうんちくがあった方が読み進めやすいだろう。上記の赤星氏とヘンプオイルを燃料にヘンプカーで日本一周をした人物でもある。

では、麻に興味を持ち、関わる人はどんなタイプか?種別すると、まず、先祖伝来麻を栽培し続けている人々、最近栽培の許可をもらって栽培を始めている、もしくは始めようとしている人々、麻の文化を大切にしている市町村、長野県の美麻村ではフェスティバルも毎年開かれている。趣味、衣服や産業用にエコロジー製品、バイオマスとして開発、麻の有効性を世間にアピール、普及していこうとするグループ、このグループは韓国や中国、欧米の資料も集めている。麻料理、化粧品、アロマテラピーに麻を利用しているグループ、奈良晒し(大麻の織物)、麻を素材に紙のアーティスト、服のデザイナー、オーガニック食品に興味がある健康志向の人々、医療大麻の研究グループ、ニューエージ系の人、などなど、どちらかというと、20代、30代の若いグループが中心的存在である。

そして、忘れてはならないのは、戦前、すでに青年であられた現在70代、80代以上の方々である。精麻を手にすると「ありがたい」と拝むタイプである。神社や神棚に祀るものであるから。からむし(苧麻)とおおあさはどちらが日本では古いか、という話は専門家に任せるとして、植物からとれる繊維、アサは動物の皮革とならんで、人類の生活に古くから関わってきたものである。

ちなみに、布の方面ではおおあさの衣服はしわくちゃにはならない。麻が植物の茎や葉脈からとれる繊維の総称ということがあまり理解されていないだけであって、他の種類の亜麻や苧麻(からむし)のシワになりやすい性質と混同されているのである。なお、おおあさは指定外繊維なので洋服のタグに「麻」とは表記されず、最近では「ヘンプ繊維」とされ、綿と混紡されるのが使いやすいそうである。着心地は上々、電磁波を避ける性質があるとも聞く。そして、からむしよりははるかに手に入りやすい価格だ。

奥会津は昭和村のからむしと栃木県は粟野町の大麻の原麻を仲良く並べると、妙に落ち着く気がする。縄文の記憶であろうか。収穫の喜びなのかもしれない。

次回は一般にはあまり知られていない大麻の古代史について触れてみたい。(おおあさ、大麻、ヘンプ(2)へつづく)

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