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薬膳料理・冬虫夏草との出遭い

北京の薬膳料理店でのオフィシャルな会食に出席する機会があった。まだ、薬膳料理という名が日本ではなじみがない昔の時代である。中華料理店で知らないうちに食べていたことはあるかもしれないが、意識したのはそのときが初めてだろう。

会場への道中、真冬の北京は零下10数度。凍えるどころか、体の表面は痛く、骨の髄がきしむほどの日だった。そんな日でもアイスキャンディー売りの声は容赦なく響き渡り、寒さを増長する夕闇時だった。

こぎれいな場所にしようということで、雑誌にも掲載された北京でも有数のレストランに予約をとった。日本側、中国側は大きな円卓に着席し、次々と運ばれてくる絢爛豪華な品々に皆、舌鼓を打った。そのコースはかなりの金額だったと思う。

店長もわざわざ説明に姿を現した。四川省料理がベースだが、それほど辛くはなく、その当時は中流以上の客筋で、繁盛しているようだった。

和やかに会が進行しているさなか、

「このスープには冬虫夏草が入っています」

「えっ?ム、虫・・・・・」

今からずいぶん前だから、聞いたこともないその虫なのか草なのかわからない食材に、体は窓の外の世界のようにフリーズしてしまった。驚いてももう遅い。そのスープは飲み干してしまった。

その後の料理も様々な薬膳料理のメニューでおいしく、会もスムーズに終わったのだが、虫のエキスが舌に絡み付いているのだから、顔はにこやかに、しかし複雑な心境のまま帰路についた。

宿に帰ると、ぽっぽ、ぽっぽ、体の芯から暖まっているのがよくわかる。その暖かさは翌日まで結構長い間続いて、凍てつく寒さを忘れるほどだった。これぞ薬膳料理の醍醐味なのかもしれない。それからもそのレストランはお気に入りでよく通った、が、冬虫夏草はそれっきり注文しなかった。

今や、冬虫夏草といえば知らない人はいないくらいになった。サプリメントにも入っており、手に入りやすいし、その高い薬効は注目を浴びている。但し、そう安価なものではない。

そもそも冬虫夏草とはどんなモノなのか。冬は昆虫、夏は草って?

虫の昆虫や幼虫に寄生して、完全にその体をのっとって命を搾り取り、たくましく生きるキノコ類である。再び虫に戻ることはない。そのキノコはミリタリス冬虫夏草とシネンシス冬虫夏草に分類される。昆虫は日本ではセミ、蜂など数百種類、中国ではコウモリガのみに寄生するといわれる。

中国の歴代皇帝がこぞって不老長寿の妙薬と求めた冬虫夏草。誰が始めに口にしようと思ったか、昔の人は直感が鋭かったのだろう。漢方の智慧は脈々と切れることなく、後世の人間にも恩恵をもたらしている。

薬膳料理を教える学校としては、薬膳料理研究家、板倉啓子さんの板倉料理学院(富山)が日本では初めてだそうだ。1992年スタートというから、私が知らずに冬虫夏草を口にしてからだいぶ後のことである。板倉さんの薬膳ハウスというウエブでは保存剤なしの冬虫夏草入りエキスを販売している。夏バテにも効きそうである。

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