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杉の枝の迎え火

車を止めて、農家の朝取り野菜を手にしているとき、ふと傍らの家に不思議な物体がそびえ立っているのに気がついた。

高さ4メートルくらいに木を組んで作ってあるその形は、子供の頃、仲のいい男女をからかって壁や地面に書いた「アイアイ傘」のようだった。三角の真ん中に支柱があるという形だ。面白いことに三角形のそれぞれの頂点に針葉樹の枝が天狗の扇のようにつけてあり、さらに二等辺三角形の二本の辺の部分に3本ずつ等間隔につけてあるので、その枝は全部で9本ということになる。

眺めていると、ちょうどその家のご主人が車で帰宅された。ちょっとインタビュー。

「ちょっとお伺いしてよろしいですか?これはどんな意味があるのでしょう?」

「これはね、新盆の年から3回だけ、飾るんだよ。提灯ぶる下げてね。」(実際には奥会津弁)

「仏様の目印にするんですね。この枝は杉ですか?」

「そう、だよ。むかしっからのならわしなんだよ。」

大きなものだから、これに提灯をぶる下げたら、さぞかし目立つことだろう。空から見下ろしたら、平面的なクリスマスツリーがゆらゆらと光って見え、新人の仏様もすぐに我が家を探し当てることができるのだろうな。どうして杉なのか、なぜ3回なのか、聞いてもわからない。詳しくはわからなくても、先祖から受け継いでいる風習なのだ。

いや、待てよ。亡くなった人の家の前に木を置くとは、どこかで聞いたような…。

このブログで前回紹介した「イトスギ(サイプレス)の十字架」では、南ヨーロッパの昔、亡くなった人の家の前にイトスギを置く習慣があった。亡くなった直後、新盆、と違いはあるが、イトスギ、杉という常緑樹をを家の前に置くという点では類似性がある。杉を新盆につる下げるのは、抗菌性というよりはすぐには枯れないという性質と常緑樹という生命力にあやかっているのかもしれない。

遠く離れたヨーロッパと日本の福島県奥会津、杉に対する感性は不思議に似通っている。偶然みつけた人と植物に関する風習であった。

これは奥会津の昭和村でのはなし。次回の「昭和村のからむし」につづく。

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