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タブラトゥーラ千客万来

タブラトゥーラのコンサートへ行ってきました。まだファン初心者ですが、この人たちの音楽は聴けば聴くほどぞっこんになります。「この人たち」と言いたくなるのは、共演者のルネッサンス・バロックの歌曲で高く評価されている波多野睦美さんが、以前「この人たちは、みなさん目立ちたがりやさんで、その中で私はどう歌うか…」と話されていたことによります。この人たちの演奏(というより、舞台)はナマで体験するとその魅力は倍増します。

いろいろなジャンル、今昔古今東西の音楽を聴きますが、このグループはなかでもユニークでしょう。今年で結成21周年とか。普段、それぞれバロックなどのメンバーですが、年に数回タブラトゥーラに変身する、というイメージでしょうか。

パンフレットには「時空を越えてやってきた世界最強の古楽器バンド」というふれこみのほか、「ヨーロッパの中世・ルネッサンス時代の舞曲の自由なアレンジや即興演奏からメンバー自身による作曲へと発展し、古楽器を使ったオリジナル曲という世界でも類を見ない独自の音楽スタイルを確立」とあります。しんみりから爆笑まで、とにかく楽しめる。

メンバーはまず、つのだたかしさん。漫画家のつのだじろう氏、音楽家のつのだひろ氏と兄弟ということで、まるで千住さん一家のような芸術一家。楽器はウード(紀元前8世紀ごろ、ペルシャで生まれたリュートの先祖)、ラウタ(ウードとリュートの中間)、リュート(ウードがヨーロッパに紹介されてリュートに、中国を経て日本へ渡って琵琶に)。陽気な今風大国主命のおなかとイチジクを半分にしたような楽器はおしくらまんじゅう!?彼が奏でる楽器たちはせつないリュートに、あるときは津軽三味線に、エレキに、琵琶に聞こえてくるのです。

北海道出身の江崎浩司さんは普段はバロックのオーボエ奏者ですが、ここでは指使いが目にもとまらぬ速さのリコーダーと、キーがなく、リードの調節が難しいオーボエの先祖のショーム。数々の賞を受賞しているそうで、その音色は非常に安定感があり、リンカーンに乗っているようです。メロディーが始まると、いきなりその世界に飛び込めます。一見静かそうですが、実はおちゃめ。そして、彼の書く文章は小粋でおしゃれ。

土浦出身の田崎瑞博さんは天使の輪っかがあるさらさら、ぴかぴかのおかっぱ頭を時にユラユラと、時にバサバサさせながら、跳ね回る弦楽奏者。普段はバイオリン、チェロですが、ここではフィドルという古い時代の擦弦楽器を操ります。バイオリンよりくびれがなくて、大きさによってチェロのように演奏するスタイルもあります。ライトの熱でチューニングが大変のようでした。彼が地面に着地すると、楽しく華麗な音楽が始まります。西欧の絵本の中からひょいと出てきた人だ。

福島出身の近藤郁夫さんが叩いているのはたこやきとは大違い、ハンマーダルシマーと中近東の打楽器タラブッカなど。中近東のサントゥールが十字軍の遠征と共に西へ伝わりハンマーダルシマーに、東へ伝わって女子十二楽坊の楊琴となりました。ハンマーダルシマーはピアノの先祖でもあります。いつも天界から光と共に降りてくるような音色に感じる。近藤さんは寡黙なマイスターのように、巧みなリズムをきざむ。メンバーの真ん中に座して、両脇の2人ずつのメンバーの支柱としてバランスをとっている、と思う。ニュートラルな人だ。

陸の恵比寿様、山崎まさしさんはギターの先祖、ビウエラを担当。普段はフラメンコギターの名手だそうです。ビウエラは16世紀にスペインで使われていたという、でも今は絵の中だけの楽器で、山崎さんのはヘッドに猫の顔を飾ってある特注品。ソフトな音と思えば、結構山椒の音が利いていました。リュートと実によくはもる。職業柄、演奏のときはあまり笑わないと紹介されていましたが、悩みがあったときは何でも聞いてくれそうな懐の深そうなおじさまです。

というように個性的な方々ですが、彼らが奏でると会場には中世のイギリス、フランス、ドイツ、スペイン、シルクロードや横須賀まで現れます。透明で奥行きが深い声の波多野睦美さんとのコラボも何百年も前にタイムスリップしたよう。ショームとフィドル、ビウエラとリュートの音色がこんなに合うとは!

ブラボーを叫ぶ練習をしてから(実は下を向きながらつのださん自身も叫んでいる)、全員総立ち(演奏者に促されてだけど)のアンコールの嵐まであっという間の充実の時間。ホールを出ると、ロビーでなんとまた演奏が始まっていました。しかもみんな踊りながら。エンターテイメント!古楽器はやはりそばで聞くのが一番。まさに音楽の喜びに満ちている人たち。このまま聴衆はこの音楽につられて、別世界まで着いていってしまいそう。特にショームを吹く江崎さんはハンメルンの笛吹きに見えました。

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