« 遣唐使 井真成 平成帰還 | トップページ | 木の王者・シーダー »

簒奪ビーフと西安大餅

家に帰るなり、

          「ピカソの簒奪ビーフ!」

    と皆で歌いながらケラケラ笑い転げているのだ。

         「はあぁ?????????」

簒奪といえば、王位簒奪、前漢末、平帝を毒殺して自ら帝位につき、国号を新とした、王莽をとっさに思いつくのがふつう。在位15年にして後漢の光武帝に滅ぼされた、あの王莽だ。

何でも、秋葉原で大音響でかかっていたのでつい買ってきてしまったという。確かに聞いたことはあるが、のまネコの空耳アワー版をきちんと聞いたことがなかったのだ。

かなり前から、ヨーロッパやネットの世界で空前の大ヒット。ある小学校では運動会で使われたり、クラスの皆が歌えるほど、らしい。実はルーマニア語で歌っているわけ。

ビルボードのヨーロッパチャートでは10週連続1位、400万枚の売り上げ。空耳を表現しているアニメーションの、のまネコが有名であるが、そもそも歌っているのは、ルーマニア人?ではなくて、モルドバ共和国出身のO-ZONEという3人の青年たちである。

モルドバ。この国はルーマニアとウクライナにはさまれた小国で、人口438万人、面積は日本の11分の1ほど。言葉も民族もルーマニアと同じで、国旗もルーマニアの国旗の中央に紋章がついている、という違いしかない。1940年にロシアに併合され、1991年に独立したという歴史をもつ。長らくキリル文字を使っていたが、その機にアルファベットによる表記を復活させた。

OーZONEのメンバーは小学生の頃に、言葉の音は同じでも二つの文字の狭間に置かれたことになる。奇遇なことに彼らの歌はさまざまな世界の言語に置き換えられているのだ。音は似ていても表記の文字が違う・・・・、ついでに意味も違う!

メンバーは2002年にルーマニアの音楽がヒットすることを予感して首都ブカレストに移動。そこから彼らのシンデレラストーリーが始まるのだ。

「DRAGOSTEA DIN TEI」 英語では「WORD OF LOVE 」

日本語で「恋のマイアヒ

日本語の空耳バージョン(エイベックス版)は、のまネコの一匹が誰かに電話しているところをもう一匹がちゃちゃをいれ、そのうち一升瓶の酒を飲んだり、牛の乳をしぼったり、あげくのはてに金髪のかつらをかぶって宴会芸もする。節分の豆を拾ってたべたりして、最後には牛にモーフをかけてもらってすやすや、というストーリーになっている。ちなみに原語では「君が行ってしまうと、色がグレーになるんだ」という恋の歌である。

ちゃちゃを入れているほうのネコ(メス?)のファンも多いと聞く。いろいろパロディーが出回ってるのにはびっくりした。

中でも台湾版は印象的。マイアヒーの最初から、ごきげんな虎や猿が登場し、うなぎ、葡萄、ネコ、エビ、竹の子など次々と画面をにぎわす。例の「簒奪ビーフ」は「西安大餅」に変身。音は「簒」が「西安」、「奪」が「大」、ビーフの「ビー」と「餅」が対応。簒奪で有名な王莽が建国した新の都は長安→西安、ビーフ→食べ物→大餅。めちゃくちゃだが、まったく関係ない言葉群でもない。「キープだ牛」の「プだ」は「葡萄」なのである。ルーマニア語→日本語→中国語、と妙な空耳変換。中国語が聞き取れる人なら結構楽しめる空耳である。台湾風なのではまるのだろう。北京語としては少々ムリがある。それにしても、世の中ボーダレスな世界になったものだ。

どうして、こんなにヒットするのだろう。中毒性があるようで頭の中をぐるぐるかけめぐる。意味づけをすることによって確かに覚えやすいことは確かである。What time is it now?は「掘った芋をいじるな!」で通じやすくなるし、1543年は「以後予算がかかる鉄砲伝来」の語呂合わせ。

数学者のピーター・フランクルさんが学習法で「ざるそば」式記憶法を提唱している。よいそばはざるの上に留まって、抜け落ちることがない。人間の脳もざるのようなものだから、物事を大きく長く、つまりいろいろなものと関連させれば覚えやすくなる、という方法だ。「恋のマイアヒ」は空耳の日本語で意味を練り込み、しかもかわいいのまネコで目も楽しませ、キャラクター効果も生まれる、といったところ。この曲に出会えば、いやなことも疲れも吹っ飛ぶ、という人も多い。

語呂合わせは昔からの記憶法の智慧、ピーターさんの「ざるそば」式記憶法は経験知によるもの。人間の脳のしくみをうまく利用した記憶法なのだろう。

ところで、祖国のモルドバはこれで知名度をあげただろうか。

|

« 遣唐使 井真成 平成帰還 | トップページ | 木の王者・シーダー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 簒奪ビーフと西安大餅:

« 遣唐使 井真成 平成帰還 | トップページ | 木の王者・シーダー »