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ロビーコンサート

ざわざわざわ、走って走って開演1分前、絨毯が敷き詰められているロビーの階段に息せき切ってたどりついた。そしてそこへ座った。

ホテルオークラのロビーの階段に座り込むなんて、ロビーコンサートのときくらいだろう。

その日は第7回『ホテルオークラ音楽賞』受賞記念演奏会。

月に1度開催されるロビーコンサートにはわざわざ遠方からそのために訪れる人も多いそうだ。

今回の受賞者は小山美稚恵さんとアンサンブルのアントネッロ。

小山さんといえば、1982年チャイコフスキーコンクール3位、1985年のショパンコンクール第4位と日本人として初めて二大国際コンクールに入賞したピアニスト。

最近ではNHKのスーパーピアノレッスンのルイサダ先生のテキストに「私のショパン攻略法」という題で執筆されており、いたく共感していた次第である。だから、彼女の生演奏を無料で聴けるなら、とタイトなスケジュールでも駆けつけたのである。

曲目は

ラフマニノフ 前奏曲より

  作品32-12 嬰ト短調 、作品23-6  変ホ長調 、

  作品23-5  ト短調 、  作品32-5  ト長調

 練習曲集「音の絵」より作品39-5 変ホ短調

スクリャービン 左手のための夜想曲 作品9-2 変ニ長調

樹氷の原野をトナカイのソリが走りぬけ、首につけた鈴が鳴り響く。

3曲目はポピュラーで、エキゾチックな香りがいい。

なかでも「音の絵」の深く垂れ込む黒雲の中に流れるメロディーが悠然として印象的だった。

スクリャービンの左手のための夜想曲はこれこそ、生演奏でしか味わえない驚きを感じた。CDだと片手だけのテクニックを実感できないほど。

でも、どちらかというと小山さんの生のショパンを聞いてみたいと思う。今年の6月からなんと12年間、全24回、前代未聞のリサイタルシリーズを開くというから、すごい。

2017年まですべてのプログラムが完成している。

「ピアニストとして、一生のうちに弾きたい曲がある。それを、この12年間で叶えます。」

毎回テーマがあり、作曲家の記念の年をからめたり、色をイメージしたり、全体で流れが出るように組んだとか。

12と24、これは短調と長調の12音があって24の調性が生まれることにつながる「音楽の基本」という意味を込めているそうだ。

ロマンへのさすらいの旅。夢が明確だから、きっと実現していくのであろう。計画性の重みを感じずにいられない。

アントネッロ

14世紀の作曲家アントネッロ・ダ・ガゼルタに由来する古楽アンサンブル。バロック以前の16~ 17世紀の音楽は、躍動感があり、自由闊達で驚くほどおしゃれだ。

バッハ、ヘンデルよりさらに時代をさかのぼるため、知られざる作品群だが、私はここらへんの時代は結構好みである。

リコーダーとコルネットは濱田芳道さん、「もののけ姫」の音楽担当、大河ドラマの「信長」「秀吉」にも出演したそうだ。コルネットには一聴ぼれというところだろうか。金管と木管のハーフのような楽器で現在は絶滅してしまったという。楽器を斜めにして吹くさまは中世の奏者のいでたちにも似合うが、アルトサックスでジャズを渋く奏でているよう。とにかくいい音。

チェンバロとハープは西山まりえさん。リコーダーには断然チェンバロが合うのである。大きなコンサートホールに負けないフルートに、リコーダーは活躍の場を奪われていったのであるが、やはり、楽器の相性というのはある。小学校の必修楽器だけがリコーダーの正体ではないのだ。木製は高く、手入れも大変だが人体に馴染む音である。小さなサロンで鑑賞したい組み合わせである。

ヴィオラ・ダ・ガンパは石川かおりさん。最近、古楽器ブームという。ハイテク楽器の使いやすさにはかなわないだろうが、音の響きには変えられない。調整の難しさ、手のかかるところがいいという人もいるだろう。車もオートマが主流で、マニュアルはかえってマニヤックな人がこだわりで乗っているように。世の中、アナログ、手作り志向も進んできている。弦楽器の彫り物つきなど、芸術作品である。

コルネットの濱田さんは6月に開催される目白バ・ロック音楽祭(バロックではありません、場+ロック=先端的なもの)のレジデント・アーティストでもある。これは面白そうな音楽祭である。

ロビーの階段に腰掛けての姿勢であったが、全身に音楽を浴びることができた。もう少し早く到着できたら、フリードリンクをちょうだいできたのだけど。

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