花うさぎと厓画無法
仙厓の○△□
大宇宙か?解釈が難しいと解説に書いてあったけど・・・言葉で説明しようったってしょうがない。
などと考えながら、奶茶の聞香杯をうっとりしながら嗅ぎ、ふと、ジュサブロー館で頂いた、パンフレットに目を通す。
さよなら三角、
またきて四角、
こんどくるとき 丸くなる。
えっ?頭の中で△□○が浮かび、それって ○△□?
シンクロである。
△□○の方は、人形師辻村ジュサブローさんが監修された山形は酒田の「夢の倶楽」のパンフレットにあったキャッチフレーズ。
友人と人形町のジュサブロー館へ行って、甘酒横丁の行列を成している高級たいやきを尻目に、豆腐の双葉でほくほくランチ。そのあと明治座の隣の浜町公園であまりにまぶしい太陽を感じて、そういえば仙厓展が終わってしまう、と急きょ出光美術館へ向かったのである。最後に茶館で芳しいお茶を飲んでいたら、△□○に気がついたわけだ。
とても不思議な感覚だった。ジュサブローさんの感性あふれる人形たちと仙厓の水墨画の主人公たちがつながったのである。天衣無縫でくったくのない笑顔の紙面の登場人物と動物たち。
ジュサブローさんの人形といえば、なんといってもNHKテレビの「新八犬伝」の、私的には犬塚志乃、伏姫などである。毎日見て、やっと無事に一日が終わるのだ。夕暮れ時の充足感。これは忘れない。そして明日が待ち遠しい。
人形町の横丁にあるその館はこじんまりとして植木に覆われている。中からは楽しそうな人々の声。ちょうど先に来ていた人たちが全員退館していくところだった。
だから、ずっと貸切。おもいっきり贅沢。お弟子さんはとらないというので、そうではないとおっしゃるが、アドバイスを頂いているという人形師の方が解説してくださって、ほーっ!の嵐であった。
割と最近の作品であるという、おいらんの帯は三本使っているという。柄を出すために。目にエナメルを塗っているだけというが、これが色っぽい。後ろに鏡があって背中も見える。なんてつやっぽいんだろう。着物のしわのより具合。やっぱり魂が入っている。肌はちりめんの質感を越えている。
明治の着物の生地はたたいているので、薄く軽い。いまのは厚ぼったい。昔の着物の色合いは優しいが、今のは派手。色が鮮やか過ぎるとかえって顔色が悪くうつる。着物の柄が大きすぎて、顔が負けてしまう。おっしゃるとおり。人形たちのお召し物は日本古来からの、はんなりいい色だ。
とにかく、「この子はいるいる!実際に。歩いているよ。そのへんに」着物を着てレトロな人形なのに、そこらへんを歩いているのだ。だから、食い入るように見てしまうのかもしれない。
ユーモラスな表情、しぐさ、お地蔵様にぐちったら「なーにいってんの~よぉ」と言われそう。世の中楽しく生きなくちゃ、そんな声も聞こえてくる。
洋風から八犬伝をきっかけに和風に、そして現在は洋風和風融合というか、境がない世界。古いものを継承するだけではなく、進化している。
一階の奥には目玉座。一ヶ月に一回、シャンソンと人形がコラボする。できあがったら越路吹雪にそっくりのコウちゃん人形も出演する。和と人形とシャンソン。
花うさぎは、酉年のジュサブローさんの向かい干支という。泉鏡花と同じ。自分の向かい干支の置物などを集めると出世するという。
おあばあちゃんが縫い物をするような、道具類にはさまれた小さな空間が工房という。なんでも手を伸ばせば届くし、アイロンも年季が入っていた。祖母の持ち物を思い出した。かんざしも柘植のくしも布の色も柄も、なんだかとても懐かしい。
落ち着いた気持ちのいい時間を過ごせた。目に心に極上栄養。
仙厓の「さじかげん」「老人六歌仙画賛」「○△□」は前から大好きだけど、今回の没後170年仙厓展は大規模だった。こーんなにたくさん。
馬祖と臨済の対は渋かったし、パイナップルのようなトドは笑っちゃう。いろいろな画風を見ることができた。仙厓は自分の絵を見て笑ってほしい、という。
見ていて頭が楽になるし、肩の力が抜けてほっとする。あるがまま。
そして、権威をものともしない、痛烈な観点はすっきりする。達磨さえも皮肉られる。
仙厓自身のまあるい後姿にはどんな気持ちがこめられているのだろう。座るとは何?と聞こえてきそうだ。
古池や芭蕉飛び込む水の音
これ、いい!
物にこだわらない禅僧と思いきや、熱心な石などのコレクターだった。すべてのものに仏性があるという表れなのだろう。
今回は「堪忍柳画賛」の絵葉書を買った。
気に入らぬ風もあらふに柳哉
風だっていつまでも吹いているわけではないよ。
時は流れて、風が吹くからこそ、柳の枝も揺らめくのである。
冬枯れて、春が来るからこそ初々しい目に鮮やかな柳の若葉がまた生まれるのである。
いくとせも四季を重ねると、風もいつかは止むのもわかってくる。
さよなら三角、また来て四角、こんどくるとき丸くなる。△□○と○△□。
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